
1990年代、ヤマハが送り出した異色のスポーツツイン「TRX850」。
その独特なスタイルと270度クランクの鼓動感で、今も熱烈なファンがいる一方で「不人気」と言われることもあります。
では、なぜTRX850は不人気とされるのか? そして、今あえて選ぶ価値はどこにあるのか?
この記事では、不人気の理由と真の魅力、中古市場の相場や維持費のリアルまで、購入検討者が気になる情報を徹底的に整理しました。
この記事でわかること
・TRX850が「不人気」と言われる主な理由
・実際に乗ってわかる走り・鼓動感・乗り味の真価
・中古車相場と年式・走行距離ごとの価格目安
・維持費・整備・部品供給の現状と注意点
「不人気=ダメ」ではありません。
むしろTRX850は、万人受けしないがゆえに“刺さる人には最高”な一台。
この記事を読めば、自分にとってTRX850が「買い」なのか「見送り」なのか、きっと判断できるはずです。
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結論|TRX850は不人気のワケと“刺さる層”を先に整理
TRX850が「不人気」と言われる背景は、日常域での使い勝手(積載・ポジション)と玉数の少なさ、部品供給の不安が主因です。一方で、270度クランクの鼓動感と中速ワインディングの楽しさは唯一無二。日常快適性より“走りの質”を優先できる人には、いまでも十分“刺さる一台”です。
結論としては、通勤・街乗り中心で万能性を求める人は再考、ワインディングや週末ツーリング主眼の人には買い。中古は個体差が大きいので、初期整備履歴や電装系の健全性を最優先でチェックしましょう。
想定読者と到達点|購入判断を3分で完了するチェック軸
- 想定読者:
- 「TRX850 不人気」の評判を見て不安になっている初見の方
- マイナー車でも“走り”が良ければOKな人/セカンドバイクを探している人
- 国産ツイン(SV650/TL1000S/900SS等)と迷っている比較検討層
- 到達点(判断フロー):
- 用途:通勤>週末ツーリング? → 通勤重視なら再考
- 好み:鼓動感・中速コーナーを楽しみたい? → マッチ
- 維持:初期整備費用と予備整備(キャブ・電装)に投資可? → 買い
- 現車:整備記録/電装リフレッシュ/足回りの消耗が揃う個体? → 即決候補
3行要約|不人気の核・買いでOKな条件・避けたい個体
- 不人気の核=日常性の弱さ+玉数少+部品の不安で評価が割れる。
- 買いでOK=用途がワインディング主体、鼓動感好き、初期整備に投資できる人。
- 避けたい個体=電装疲れ(レギュレータ/発電系)放置、キャブ不調、足回り劣化を未整備のまま販売している車両。
基本情報|TRX850とは(1995–1999年・849cc・270度クランク)
ヤマハ「TRX850」は、1995年に登場した並列2気筒849ccエンジン搭載のスポーツツインです。
当時のキャッチコピーは「トラス構造の心を持つツイン」。アルミ製ツインスパーフレーム全盛期に、鋼管トラス風フレームという個性的な設計で登場しました。1999年で生産終了となりましたが、いまも根強いファンが多いモデルです。
その独特の270度クランクが生み出す鼓動感は、Vツインのようなトラクションフィールを持ち、現在のMT-07のルーツとも言われています。
主要スペック|約80PS・車重約200kg・キャブ仕様の特性
TRX850は、ヤマハの「TDM850」と同系統の849cc DOHC並列2気筒エンジンを搭載。
- 最高出力:79ps/7,500rpm
- 最大トルク:8.0kgf・m/6,000rpm
- 車重:約200kg(装備重量)
- トランスミッション:6速
- 燃料供給:キャブレター(ミクニBDST38)
当時としては中間トルク型のセッティングで、ワインディング中速域の粘りとリニアなレスポンスが特徴。
電子制御など一切ないため、ライダーのスロットル操作がそのまま反応する“アナログな楽しさ”が味わえます。
ただしアイドリングの不安定さや始動性の悪さはキャブ車ゆえの宿命で、現代の感覚では整備次第で大きく印象が変わります。
年式ごとの違いと注意点|カラー変更/足回り/装備の細かな差
TRX850は短命なモデルでしたが、年式でわずかな仕様変更があります。
- 1995〜1996年式(初期型):赤×白カラー。純正サスはやや柔らかめ。
- 1997〜1999年式(後期型):ブルー系カラー登場。キャブやサスセッティングが微調整され、フロントフォークの減衰が改善。
外装パーツ(カウル・タンク)は共通ですが、純正部品の供給終了が進んでいるため、割れ・欠け・タンクのサビなどは購入前に要確認です。
また、シートレザーの劣化やメーター曇りなど樹脂・ゴム系の経年劣化も多いため、年式ではなく「整備履歴の新しさ」で判断するのがコツです。
乗り味の要点|並列2気筒なのにVツイン風の鼓動とハンドリング
TRX850最大の魅力は、Vツイン的な鼓動感と軽快な旋回性能の両立です。
270度クランクにより、点火間隔がVツインに近く、パルス感のあるトラクションを発生。
スチールトラス風のフレーム剛性と軽量なホイールベースの組み合わせで、コーナーの立ち上がりが滑らかに感じられます。
また、低速域では扱いやすく、高速道路ではやや回転数が高めに感じるギア比設定。
このため「ワインディングを楽しむ週末バイク」としての評価は高いものの、街乗り・通勤ではギクシャク感が気になる人もいます。
まさに“乗り手を選ぶ”スポーツツインと言えるでしょう。
なぜ「不人気」と言われるのか
TRX850は、発売当時からコアなファンを持ちながらも、市場全体では“マイナー車”として扱われてきました。
その理由は単に「性能」だけでなく、時代背景・市場の方向性・使い勝手など複数の要素が絡んでいます。
ここでは、不人気とされる主な3つの要因を整理していきます。
デザイン/ポジション/積載性──日常域でのミスマッチ
TRX850のデザインは、当時の日本市場では**「どこにも属さない個性派」**と見られていました。
スチールトラス風のフレームとフルカウル未満のハーフカウルが特徴的でしたが、
「スーパースポーツのような派手さがない」「ネイキッドほど実用的でもない」という中途半端な印象を持たれることが多かったのです。
また、前傾が強めのポジションも日常走行では少し疲れる構成。
タンク形状の関係でタンクバッグが載せづらく、積載力も乏しいため、通勤やツーリングの快適性では他車に劣る部分もありました。
結果、「実用よりも趣味性の強いマシン」として、一般層には広がりにくかったのです。
低速トルク体感とギア比のギャップ|街乗りで起きやすい不満
エンジン自体は中速域の伸びが素晴らしい一方で、低速トルクの体感が薄いという声が多く聞かれました。
特に街乗りではギア比がややハイ寄りで、1速〜2速のつなぎで“もたつき”を感じることがあります。
当時はリッターSSや400ネイキッドが全盛期。力強くスムーズに走る車種が人気を集める中で、TRX850はどうしても“玄人向け”に映ってしまったのです。
とはいえ、これはキャブの同調・ジェット設定、あるいは**スプロケットの丁数変更(リア+1〜2丁)**などで改善可能。
購入後のセッティング次第で、まるで別物の乗り味に変わる潜在能力を秘めています。
玉数の少なさと部品供給|消耗品・外装・電装の入手性
TRX850は国内販売が短命(約4年)だったため、中古玉数が非常に少ないです。
Goobikeなどを見ても、2025年現在では全国で20台前後とレアな存在。
さらに、純正部品の廃盤化が進行中で、外装・電装系の一部はすでに入手困難となっています。
特に注意すべきは以下の3点です。
- レギュレータ/ジェネレーター系統:劣化や焼損事例が多く、社外流用での対応が必要。
- 外装(カウル・タンク):割れ・サビ・塗装剥がれの補修コストが高め。
- メーター・ハーネス類:中古流通が少なく、現車優先で探す必要あり。
ただし、エンジン自体は頑丈で、TDM850と共通部品も多く、メカ的には長く乗れる一台。
「入手性を理解して維持できる覚悟」があるかどうかが、TRX850オーナーの分かれ道になります。
それでも刺さる“真価”はここ|TRX850が光るシーン
TRX850が「不人気」と言われてもなお、根強いファンが離れないのは、他車にはない“走りの質感”があるからです。
扱いにくさも含めて「自分で操っている感覚」が得られる、いわば純度の高いライダー向けマシン。
ここでは、TRX850が最も輝くポイントを3つに絞って紹介します。
270度クランクの鼓動とコーナリング|中速ワインディング適性
TRX850最大の魅力は、やはり270度クランクが生み出すVツイン風の鼓動感。
スロットルを開けると「ドドドッ」と心地よいパルスが路面に伝わり、トラクションを感じながらコーナーを抜ける快感は格別です。
特に60〜100km/h付近の中速域では、トルクのつながりが自然で、コーナーの立ち上がりでリアが路面をしっかり掴む感覚が得られます。
このエンジン特性は、後年の「MT-07(688cc)」にも受け継がれており、TRX850はその“原点”とも言える存在です。
スチールトラス風フレームの安定感とヒラリ感の両立
TRX850は一見アルミフレーム風ですが、実際はスチール製トラス構造を採用しています。
この構造が、しなやかで粘るようなコーナリングフィールを実現し、旋回中の安定感と素直な倒し込みを両立。
車重200kgの割に軽快に感じられるのは、この“しなり”が適度に衝撃を吸収してくれるためです。
また、低速域でもセルフステアが自然で、バンク角を深く取っても挙動が安定。
ハンドリング重視のライダーからは「この時代のヤマハで最も“走り”が楽しいバイク」と評価されることもあります。
小改良で化けるポイント|Fスプリング/ジェット/ファイナル調整
TRX850は、少しの手入れで劇的に化けるのも特徴です。
特に以下の3つのカスタム・メンテナンス項目は、効果が高いとオーナー間でも評判です。
- フロントフォークスプリング交換:ハイパープロやオーリンズ製に変えると初期沈み込みが安定。
- キャブセッティング見直し:メインジェットを#132.5〜#135に上げ、アイドリング安定化+トルク感アップ。
- ファイナル調整:リアスプロケット+1〜2丁で街乗りレスポンスが改善。
このように、整備+軽いカスタムで別物の走りになるのがTRX850の奥深さ。
“素の性能を楽しむ”より、“自分好みに仕上げていく喜び”こそ、このバイクが今も語り継がれる理由です。
中古相場の見方(Goobike参照)
TRX850は販売終了から25年以上が経過しており、中古車市場での玉数は全国でも20台前後と非常に少ないモデルです。
そのため、相場は「状態・整備履歴・カスタム内容」で大きく変動します。
ここでは、2024〜2025年時点のGoobike掲載データをもとに、価格レンジと傾向、走行距離別の目安、そして上振れ要因を整理します。
2024–2025の価格レンジと中央値の傾向|上昇/横ばいの判断軸
2025年現在、TRX850の中古車価格帯は約50万円〜100万円前後。
以下のような相場傾向が見られます。
状態 | 価格帯 | 特徴 |
---|---|---|
不動・要整備ベース | 約40〜55万円 | キャブ詰まり・電装劣化・再生前提 |
通常整備済・ノーマル車 | 約60〜80万円 | キャブOH済・レギュレータ交換済など |
カスタム車・極上車 | 約85〜100万円 | サス・マフラー・外装リフレッシュ済 |
3年前(2022年)は50万円前後が主流でしたが、現在は上限が10〜20万円上昇傾向にあります。
背景には、TRX850が「プレMTシリーズ」として再評価されていることや、状態の良い個体が減ってきたことが挙げられます。
ただし、状態次第で上下差が激しいため、整備記録と現車確認の徹底が必須です。
走行距離別の相場感|〜1万/1–3万/3–5万/5万km〜の目安
走行距離ごとの実勢価格目安は次の通りです。
走行距離 | 相場目安 | ポイント |
---|---|---|
〜1万km | 約90〜100万円 | 超希少。保管状態重視。ほぼ展示向き。 |
1〜3万km | 約70〜85万円 | 実走派に人気。キャブOH済なら即買いレベル。 |
3〜5万km | 約60〜75万円 | 普通に使える現役個体多数。整備履歴が命。 |
5万km〜 | 約50〜60万円 | 安価だが電装・足回りリフレッシュ費用前提。 |
特に3〜5万km台の整備済車両が“買いの中心”。
このレンジでキャブ・足回り・電装を整備済なら、長く乗るにはベストバランスです。
カスタム内容での上振れ要因|フルエキ/足回り/ブレンボ等
TRX850は、状態やカスタム次第で価格が+10〜20万円変動します。
相場を押し上げるカスタム要素として、以下が代表的です。
- フルエキゾースト(ヨシムラ/モリワキ/ビートなど)
→ 純正より軽量化+音質向上で人気。 - サスペンション(オーリンズ・ナイトロン)
→ 乗り味改善+メンテ済みならリセールも強い。 - ブレーキ系(ブレンボキャリパー/メッシュホース)
→ 年式劣化部分の刷新として価値が高い。 - 外装リペイント済 or カウル補修済
→ タンクサビや日焼け跡が多い車両のため、塗装状態は価格を左右。
逆に、過度なカスタムや配線処理が雑な個体は敬遠されがち。
「純正+信頼できる整備」の組み合わせが、TRX850では最も価値が安定しています。
失敗回避チェックリスト(現車確認テンプレ付き)
TRX850は発売から25年以上経つため、「見た目がキレイ=整備済み」ではない点に注意が必要です。
ここでは、購入前に確認しておきたいチェックポイントをまとめました。
現車確認時にこのリストを手元に置いておくと、トラブルを避けやすくなります。
キャブOH履歴/負圧ホース/レギュレータ・発電系の健全性
TRX850はキャブ車のため、キャブレターの状態が最重要ポイントです。
長期放置車ではガソリンが固まり、スロー系の詰まりが発生していることが多く、
エンジン始動性やアイドリング安定性に直結します。
- キャブOH(オーバーホール)履歴があるかを必ず確認。
→ 専門業者での分解洗浄・同調済みなら安心。 - 負圧ホースの硬化や亀裂もチェック。アイドリング不安定の原因になりやすいです。
- レギュレータ/ジェネレーターは経年劣化しやすく、焼損例も報告されています。
→ 交換履歴がない場合は、**社外新品(汎用型約7,000〜10,000円)**を事前に確保するのがおすすめです。
Fフォークオイル漏れ/ステム/ホイールベアリングのガタ
足回りは、長年の経年でコンディション差が最も出やすい部分。
整備履歴が見えない場合は、オイル滲みやガタつきを重点的に確認しましょう。
- フロントフォーク:インナーチューブの錆・点サビ・オイル漏れ跡をチェック。
→ オイルシール交換だけでなく、インナー研磨が必要なケースもあります。 - ステムベアリング:ハンドルを左右に切った時の“ゴリゴリ感”は要注意。
- ホイールベアリング:空転時に異音や引っかかりがあれば要交換。
→ 純正品は欠品気味のため、**汎用品(NTN製など)**流用も検討を。
ハーネス劣化/社外メーター化/転倒歴の痕跡チェック
古い車両では、電装トラブルや配線の劣化が隠れトラブルとして多発します。
とくにTRX850は熱によるハーネス被覆の硬化が進みやすく、火花飛びや通電不良を起こすことがあります。
- メインハーネスの被覆ひび割れや接触跡がないか確認。
- 社外メーター化車両は、配線処理の品質に注意。走行距離の信頼性が落ちるため、記録簿と照合を。
- フレームやステップ、スイングアームの傷やタッチアップ跡は転倒歴のサイン。
→ 小傷よりも、溶接跡・微妙な歪みの有無が重要です。
この3点をクリアしていれば、TRX850はまだまだ現役で走れる一台です。
「安さ」で飛びつくよりも、整備済み・履歴明確・電装リフレッシュ済みの個体を選ぶ方が、
結果的に安上がりで快適に楽しめます。
維持費の目安と実例
TRX850の維持費は「排気量のわりに安い」と言われますが、古さゆえの整備コストを見落とすと意外に費用がかさみます。
ここでは、年間維持費の目安と、実際に必要となる項目を具体的に整理します。
毎年の税金6,000円・自賠責・任意保険の相場観
TRX850は850ccクラスなので、軽自動車税(バイク税)は年額6,000円です。
加えて、任意保険と自賠責保険を含めると、以下のような目安になります。
項目 | 費用目安(年間) | 備考 |
---|---|---|
自動車税(軽自動車税) | 約6,000円 | 4月納付 |
自賠責保険(24ヶ月) | 約9,000円(年4,500円換算) | 車検と同時加入 |
任意保険(26歳以上) | 約25,000〜45,000円 | 対人・対物無制限、車両なしプラン想定 |
合計 | 約35,000〜55,000円 | 年齢・等級で変動あり |
任意保険を安く済ませたい場合は、**ZuttoRide Club(ズットライド)**などのロードサービス付きプランを検討するのもおすすめです。
車両保険を外せば、年間3万円台に抑えることも可能です。
車検費用の内訳(重量税・印紙・整備)と節約術
TRX850は「車検付きバイク」なので、2年ごとに車検費用が発生します。
整備内容にもよりますが、一般的な目安は次の通りです。
区分 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
重量税 | 3,800円 | 継続車検時 |
検査登録印紙代 | 約1,800円 | 陸運支局で支払い |
自賠責(24ヶ月) | 約9,000円 | 必須 |
基本点検・整備費 | 約20,000〜40,000円 | 店舗や整備内容で差あり |
合計 | 約35,000〜55,000円 | 自分でユーザー車検なら2万円台可 |
自分で整備できる方は、ユーザー車検で大きく節約できます。
TRX850は構造がシンプルなので、ライト光軸・排ガス・ブレーキ系統が正常なら比較的通りやすい車種です。
消耗品サイクル|17インチタイヤ/チェーン/プラグ/ブレーキ周り
古い車両ほど、消耗品をどこまで交換してあるかが維持費を左右します。
以下は実用距離の目安です。
部品 | 交換目安距離 | 交換費用目安 |
---|---|---|
タイヤ(前後17インチ) | 約10,000〜15,000km | 約40,000〜60,000円(ダンロップ・BT46など) |
チェーン&スプロケット | 約15,000〜20,000km | 約25,000〜40,000円 |
スパークプラグ(CR9EKなど) | 約10,000km | 1本1,000円×2 |
ブレーキパッド | 約10,000km | 前後合計約8,000〜12,000円 |
ブレーキフルード | 1年ごと | 約2,000円(DIY可) |
これらを計画的に交換すれば、年間維持費は約6〜8万円前後で安定します。
ただし、購入直後にまとめてリフレッシュが必要な場合は、初年度だけ+5〜10万円ほど見ておくと安心です。
TRX850は決して維持費が高いバイクではありません。
むしろ、基本構造がシンプルでDIY整備に向いているため、手を入れるのが好きな人には“コスパの良い大型”といえます。
競合比較で分かる立ち位置|SV650/Ducati 900SS/TL1000S
TRX850は、そのエンジン形式・排気量・価格帯から、SV650(SUZUKI)やDucati 900SS、TL1000Sなどとよく比較されます。
ここではそれぞれの特性を整理しながら、TRX850がどんなポジションにあるかを明確にしていきます。
重量/トルク/燃費の実用比較|通勤〜ワインディング
TRX850は“ミドルスポーツツイン”という共通カテゴリに属しますが、実際のスペックを見ると方向性が異なります。
以下は主要3車種の比較表です。
車種 | 最高出力 | 最大トルク | 車重 | 実燃費 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
YAMAHA TRX850 | 79PS / 7,500rpm | 8.0kgf·m / 6,000rpm | 約200kg | 約18〜22km/L | 中速域重視・ワインディング向け |
SUZUKI SV650 | 76PS / 8,500rpm | 6.5kgf·m / 8,100rpm | 約197kg | 約25〜28km/L | 軽量・扱いやすく通勤にも◎ |
Ducati 900SS | 80PS / 7,000rpm | 7.4kgf·m / 6,500rpm | 約188kg | 約16〜20km/L | 空冷Lツイン・クラシック志向 |
SUZUKI TL1000S | 125PS / 8,500rpm | 10.0kgf·m / 7,500rpm | 約203kg | 約14〜18km/L | パワー型ツイン・上級者向け |
TRX850はSV650よりもトルクが厚く、900SSほど神経質でもない中庸な性格。
“日常でも走れるツインスポーツ”としてバランスが取れており、中速域の粘りと鼓動感の調和が際立ちます。
燃費は20km/L前後と現代車より控えめですが、ツーリングでも十分実用範囲です。
エンジン性格と鼓動感の違い|好みで選ぶ基準
- TRX850:270度クランクによる“ドコドコ”としたVツイン風のパルス感。トルクの立ち上がりが自然で、ワインディングでの立ち上がりが秀逸。
- SV650:90度Vツインのスムーズな吹け上がり。鼓動感よりも扱いやすさ重視。
- 900SS:空冷Lツインの荒々しい鼓動とメカノイズが魅力。独特のレスポンスで好みが分かれる。
- TL1000S:ハイパワー志向で、スロットル開け始めの暴力的トルクが特徴。
TRX850はこの中で「扱いやすさとキャラクターのバランスが最も良い」位置づけ。
エンジン特性が自然で、電子制御がないため、スロットル操作のダイレクト感が際立ちます。
中古価格と玉数・部品流通の“安心度”比較
車種 | 中古相場(2025年時点) | 玉数 | 部品供給 | 維持性 |
---|---|---|---|---|
TRX850 | 約60〜100万円 | 少(20台前後) | 一部廃盤・要流用 | 中〜難 |
SV650 | 約40〜70万円 | 多 | 現行生産・供給良好 | 容易 |
900SS(空冷) | 約80〜150万円 | 中 | 一部純正終了・社外豊富 | 中 |
TL1000S | 約50〜90万円 | 少 | 部品減少中・流用品あり | 中〜難 |
TRX850は中古相場こそ上昇気味ですが、整備性が高く社外部品の流用も可能。
TDM850・XJR系パーツと共通部品も多く、メカに詳しい人なら維持は十分可能です。
一方、純正外装・電装類は入手困難になりつつあるため、「部品取り車を確保しておく」選択も有効です。
つまりTRX850は、“実用的に楽しめるクラシックツイン”の中間点。
SV650ほどライトではなく、900SSほど繊細でもない。
その“ちょうどよさ”が理解できる人にとっては、いまも唯一無二の存在です。
用途別おすすめセットアップ
TRX850はノーマルのままでも十分に走れるマシンですが、使用目的に合わせて少し手を加えることで化けるのがこのバイクの面白さです。
ここでは「通勤・街乗り」「ワインディング」「ロングツーリング」の3つの用途別に、快適性と走行性能を両立させるセッティング例を紹介します。
通勤・街乗り向け|ハンドル/スプロケ/冷却ファン制御
街乗りメインなら、まずポジションと扱いやすさを重視しましょう。
- ハンドル交換(ハリケーン・EFFEXなど)
純正よりも10〜20mmアップのバーハンドル化で、前傾が緩まり疲労が激減します。
ケーブル類は純正流用可なのでコスパも良好。 - リアスプロケット+1〜2丁アップ
低速トルクの薄さを補える最も手軽な改善。1速のギクシャクが減り、街中での発進がスムーズになります。 - 冷却ファンスイッチ改造
真夏の渋滞でオーバーヒート気味になる個体が多いため、手動ファンスイッチを後付けしておくと安心。
純正の温度センサー作動温度(約105℃)より早く作動させる設定にしておくとベターです。
ワインディング向け|プリロード/減衰調整とブレーキ強化
峠道での安定性とリニアなブレーキタッチを求めるなら、足回りの見直しが最優先です。
- フロントフォークのプリロード強化
社外スプリング(ハイパープロ・オーリンズ)を導入するだけで、ブレーキング時の沈み込みが安定します。
同時にフォークオイルを**#15番(純正は#10)**へ変更すれば、減衰が増しフロントの感触が引き締まります。 - リアサス交換
純正ショックは経年劣化で抜けている個体が多いため、ナイトロンやオーリンズ製に交換するのがベスト。
減衰力調整式なら、路面状況に合わせた細かいチューニングが可能になります。 - ブレーキ強化(ブレンボキャリパー+メッシュホース)
古い純正キャリパーは引きずり気味になることがあり、制動フィーリングが甘くなりがちです。
ブレンボP4 30/34+メッシュホースに交換すれば、握り始めからのレスポンスが格段に向上します。
ロング向け|スクリーン/シート改良/ギア比最適化
ツーリング用途で疲れを軽減するには、風防とポジションの調整がポイントです。
- ロングスクリーン(MRA・GIVIなど)
純正スクリーンは短めで胸元に風圧を受けやすいため、ツーリング派なら交換推奨。
特に高速道路走行では、上半身の疲労度が大幅に減ります。 - シート加工 or 社外シート(デイトナ・タックロールタイプ)
純正は硬めで長距離では尻が痛くなりやすいので、低反発ウレタン+滑り止め加工で快適性UP。 - フロントスプロケット+1丁アップ
高速巡航で回転数を下げたい人は、ファイナルをロング化するのもおすすめ。
100km/h巡航時の回転数が約500rpm下がり、燃費と静粛性が改善します。
このようにTRX850は「いじるほど応えてくれる」素直な設計。
使い方に合わせてセッティングを最適化すれば、街でも峠でもツーリングでも、現代車に引けを取らない万能ツインへと仕上がります。
賢い買い方と交渉術
TRX850は中古玉数が少ないため、「良質な1台」を逃さない行動が重要です。
状態の良い個体はすぐに売れる傾向があり、情報を早くつかみ、現車確認で正しく見極めることが何より大切です。
相場の“谷”を狙うタイミング指標|在庫・掲載日数・価格改定履歴
TRX850は生産終了モデルのため、季節と掲載期間で価格が変動します。
Goobikeなどで相場を追っていると、次のようなパターンが見られます。
- 2〜3月:春のシーズン前で価格上昇傾向。
- 6〜8月:梅雨・猛暑でバイク需要が落ち込み、値下げ車両が増える。
- 10〜12月:在庫整理で「諸費用コミコミ」価格が出やすい時期。
また、掲載期間が30日以上の車両は、在庫滞留の可能性が高く、値下げ交渉が通りやすい傾向にあります。
掲載履歴サイト(オートバイバンクなど)で価格推移を追えば、「いつ下がるか」が見極めやすくなります。
現車確認で使える質問リストと見積もりチェック項目
現車を見に行く際は、ただ「キレイですね」で終わらせず、以下のような質問を準備しておくと確実です。
必ず聞くべき5項目
- キャブOH・同調はいつ行ったか?
- レギュレータ・ジェネレーターの交換歴は?
- タイヤ・チェーン・バッテリーの交換時期は?
- 車検時の整備記録(点検記録簿)はあるか?
- 現在、不具合や気になる点はあるか?
見積もりでチェックすべき項目
- 車両本体価格+諸費用=乗り出し総額を確認(整備費・登録費込みか)
- 納車整備に含まれる内容(オイル交換・プラグ・ブレーキフルードなど)
- 保証期間・返品条件の有無
これらを明確にすることで、後から「聞いてなかった」を防ぐことができます。
乗り出し総額の試算|本体+諸費用+初期整備の現実的ライン
TRX850の購入に必要な実費をまとめると、次のようなイメージになります。
項目 | 費用目安 | 備考 |
---|---|---|
本体価格 | 約70万円 | 状態良好な整備済み車両 |
諸費用(登録・整備・自賠責) | 約10〜15万円 | 店舗によって差あり |
初期整備・部品更新費 | 約5〜10万円 | タイヤ・バッテリー・ホース類など |
合計 | 約85〜95万円 | 乗り出し可能ライン |
つまり、予算90万円前後を目安にしておけば、状態の良いTRX850を安心して手に入れることができます。
逆に「70万円以下」の個体は、初期整備を自分で行う前提で見ておくと失敗が少ないです。
TRX850は数が少ないぶん、「整備済み・履歴明確・現車美麗」な1台を見つけたら即行動が鉄則。
気になる車両を見つけたら、まず販売店に**「整備内容と保証範囲をメールで確認」**しておきましょう。
この一手で、後悔のない購入体験にぐっと近づきます。
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バイクワンは、バイク買取専門店として全国対応しており、不動車や事故車、ローン残債ありのバイクでも柔軟に対応してくれるのが特徴です。手数料は一切不要で、幅広い車種を高価買取しています。
- 不動車・事故車でも査定OK
- ローン中のバイクも相談可能
- 出張査定・引き取り無料
- 幅広いジャンルのバイクを高価買取
「売れるかどうか不安…」というバイクでも一度相談してみる価値があります。
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バイク買取専門店バイクワン
まずはこの2社で査定を受けて比較することで、より高い買取額での乗り換えが実現します。
一括査定のように大量の営業電話に悩まされることもないため、安心して利用できます。